はじめに
ちょっと番外編として、検討したけれど、諦めた選択肢のお話です。絵を本格的に勉強したいと考えた時、一度は通信制美大を考えたりしませんか?
私は考えましたが、結局は検討段階で諦めてしまいました。美大卒のタイトルだけも欲しいと考えたり、いやいやもしやるのなら実技もしっかりやりたい。選択肢も考えましたが、なぜ、諦めたのか?京都美術大学と武蔵美術大学の通信制について考えてみました。
そもそも厳しい通信制

高等学校勤務の経験から、そもそも通信制大学の卒業率が大変厳しいことを知っていました。一般的には、卒業率というのは数%と言われています。多くの大学は通信制の卒業率をほぼ公表していません。事前に知ったら、ほぼ無試験であったとしても、入学したいと思わないでしょう。大学にとって通信って、ドル箱かしらと思ったり。
(ただ、最近の新しい通信制はオンラインを駆使し、映像授業を多用したり、数十%の卒業率を示している大学もあります。)
そもそも、全く新しいことを学ぶのに、テキストや返送用封筒などの書類を送ってくるだけでは、継続のハードルも高いです。例えば、小学校の教員免許取得のために、特定の単位が必要なだけならまだしも、4年後の卒業となると孤独な上にモチベーションの維持は難しくなります。
通信制の美大があるのは知っていましたが、座学だけならともかく、実技があるので、もっと厳しいのではないかと思っていました。
京都美術大学

通信制の厳しさを知っていても、美大卒のタイトルは欲しい。そんな気持ちが捨てきれずに、実技やスクーリングのない通信制美大に編入するのはどうだろうと思い立ちました。美大卒という経験・実力を取るのではなくて、コスパよく美大卒の肩書だけでも、手に入れたいという思いに駆られました。
京都美術大学の通信制には、スクーリングの必要がない芸術教養学科がというのがあります。私は4年制大学を卒業しているので、3年次編入すれば、2年間の過程をこなすだけで卒業できます。
学費は、書類選考料2万円、入学金3万円、年間授業料が17万円なので、最短で卒業できれば、40万円ほどの学費ですみますし、授業の多くがオンライン上の動画で行われ、書籍などの購入もせずにすみます。卒業率について、大学側は明言していませんが、1~2割であると回答しています。
個人のnoteやブログを読むと、単位認定も比較的易しく、コスパ的にはとてもいいのですが、結局は断念しました。
そのきっかけは、ネット上の紹介で見た卒業研究です。通信制で卒論なんて書けるのかな?と不安に感じていましたが、実際にネット上で紹介されているものを見て、びっくり。
おおむね高校生の書いたてレポートという感じでした。テーマに沿って、色々調べられており、インタビューなども行っていました。しかし、いわゆる学術的な手続きや形式を踏んでいません。
そもそも、普段の授業から本や論文を読む訓練をせずに、動画見て簡単なレポートの提出だけで、論文なんて読めるわけありませんし、ましてや書けません。インタビューでも形式に乗っ取った形というのがあります。
卒論でもなければ、学術的方法論を踏襲していないので、大学生のレポートでもありません。(大学生のレポートとはただ調べるのではなく、一定の方法論に従って作成する事が肝となります。)そもそもよく見たら、卒論ではなく、卒業研究で、文化資産評価報告書を書く、という位置付けと知って納得しました。
個人的印象としては、通信制大学というよりもオンラインのカルチャースクールだなという印象を受けました。40万円は学位のための学費としては安いけれども、カルチャースクールの受講料と考えるととても高額に感じます。
そこで、そこにお金を支払うくらいなら、絵画教室や画材代に当てた方がいいなあ。という判断に至りました。
武蔵美術大学

通称ムサビは通信制の伝統が長いことでも知られています。ここも3年次編入が可能です。こちらは、美術系の通信教育の歴史も長く、また、検索すればいろんな方のブログやnoteで体験記を読むことができます。
私がちょこっと考えたのは、油絵か日本画ですが、こちらはスクーリングが必要です。(京都美術大学の通信にもありますが、スクーリングを考えると、通うとすると武蔵美術大学かな?と思いました。)

スクーリングするなら通えるかどうか?宿泊などが必要な場合はその費用も考えておくといいよ!
学費としては年間34万円。実技などスクーリングの授業はまだ別料金となり、新たに学費がかかります。細かいシミレーションはこちら。それによると、3年次編入だと、2年で100万円弱かかる計算になります。
そのほか、スクリーグングのための交通費、場合によっては宿泊費などもかかります。いろいろと費用は嵩みますが、それでも私立の美大の学費を考えると破格であることは間違いありません。ちなみに、私立美大の年間の学費は200万円弱かかるのが一般的です。
ただ、学費よりも大きな問題は実技です。スクーリングは実技が中心で、4日間で30号ほどの作品を仕上げたり、卒業制作には100号の作品を仕上げなければいけません。また、大きい作品の制作のためには、画材も結構かかります。
(卒業制作もスクーリングがあるらしく、大学への提出も含めて、100号の作品を数回輸送しなければいけません。その手間や輸送費だけでも、結構、大変です。)

100号の絵の輸送は扱っている業者も限られているよ。また、輸送料も1回あたり4 、5万円くらいかかる場合もあるので、予め調べておくといいかも。
通信制は書類に問題がなければ、ほぼ通るようですが、そんな大作を専門的なトレーニングなしではできるはずがないなあ。と感じました。また気になる卒業率ですが、これも大学からの公式の見解はありません。参考としては、大学側が出している資料から、卒業率を計算した方がいます。こちら
それによると、推定の卒業率は概ね10パーセント前後と、想像通り厳しいです。また、ネット上で体験記を書いている方の多く(3年次編入)が、2年で卒業されている方はほぼおらず、3ー6年をかけていますす。
留年すれば、年間で34万円の学費がさらにかかります。また、仕事などの都合で卒業を断念された方も散見されます。
通信を考えるようになってから、自分の回りにも武蔵美術大学の通信を卒業している方々がいました。
その方々はすでに美術系の仕事をしている、或いは、かなり長い間、油絵の絵画教室などに通われて、集大成として通信に入学した。という方々ばかりでした。また、美大志望でそれなりに勉強したが、経済的に通学制の美大の進学を断念して、通信制に入ったなど、そもそも美術系の経験・技術のバックグラウンドがかなりある方達という印象でした。
今の自分にはとても難しく、その分のお金と時間を絵画教室などにかけた方が、ムリなく効率敵であろうと痛切に感じました。
まとめ

通信制の美大は、学費面はクリアできそうですが、その内実を考えると、とても厳しいと感じました。肩書きだけなら、なんとかなりそうです。
一方で、実技がしっかりある教育課程を考えると、そもそも専門的なトレーニングなどが必要だと感じました。また、通信の美大を卒業されている方は、絵のキャリが長い方が多いと感じたので、初心者が始めるものではないな。と心底感じました。
それでも興味がある方は、それぞれの大学は学校説明会が開かれていますので、そちらに参加すると、現実的な課題が見えてくるかもしれません。








諦めちゃった理由は???